紹介予定派遣はやめた方がいい？デメリットと真相を徹底解説

正社員として直接雇用につながることで人気の高い紹介予定派遣ですが、「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われることもあります。本記事では、「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由や実態について解説します。

そもそも紹介予定派遣とは？

そもそも紹介予定派遣とはどのような形式なのかご説明します。なお、紹介予定派遣と通常の派遣における違いについて十分に理解しているという場合は「「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由」にお進みください。

紹介予定派遣での仕事も、通常の派遣同様に派遣会社から紹介を受けて開始します。派遣期間における雇用元は派遣元の会社となっています。

紹介予定派遣の大きな特徴は、派遣就業前または開始後に、派遣先企業に職業紹介することを前提としているという点です。派遣期間（最長6か月）を終了したのち、本人と派遣先企業双方の合意のもとに、派遣先企業の直接雇用（＝社員）となることができます。紹介予定派遣は正社員登用するうえでの「試用期間」の様な側面も含んだ派遣形態となっています。

他にも、通常の派遣と比較すると下記の様な違いがあります。

項目	通常の派遣	紹介型派遣
直接雇用前提の明示	直接雇用は前提としていない （ただし契約期間後に評価次第で正社員登用される可能性は0ではない）	派遣期間後の直接雇用を前提にしていることを明示する必要がある
選考の有無	派遣前において派遣先企業 による面談・選考はない	派遣前において派遣先企業による 面談・選考を受ける必要がある
契約期間	最長3年間	平均3か月 （最長6か月）
直接雇用への切り替え	派遣期間中は直接雇用不可	同意があれば派遣期間中も 直接雇用に移行可能

紹介予定派遣と通常の派遣の違い#1:
直接雇用前提の明示

紹介予定派遣と通常の派遣における大きな違いとして挙げられるのが、直接雇用を前提としているかを明示する必要があるという点です。紹介予定派遣では、派遣先企業が直接雇用を前提にしていることを事前に明示する必要があります。応募する派遣社員側も、直接雇用を前提としている点を理解して申し込む必要があります。

紹介予定派遣と通常の派遣の違い#2:
選考の有無

紹介予定派遣では、派遣先企業で働く上で派遣先企業による選考があるというのも大きな違いです。

通常の派遣では派遣先の企業と派遣社員が雇用契約を結ぶわけではないため、就業前の書類選考や面接が禁止されていますが、紹介予定派遣では将来的な直接雇用につながる可能性があるため、就業前の書類選考や面接が認められています。場合によっては選考の段階で派遣先企業に落とされてしまう可能性もあります。

紹介予定派遣と通常の派遣の違い#3:
契約期間と直接雇用への切り替え

通常の派遣において派遣期間は最長3年ですが、紹介予定派遣では最長6か月となっています。通常の派遣では派遣期間中に直接雇用へ移行することはできませんが、紹介予定派遣では労働者と派遣先企業による双方の合意があれば派遣期間中であっても直接雇用に移行することができるという点が異なります。

「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由・デメリットを解説

ここまで通常の派遣と紹介予定派遣における違いについてご説明してきましたが、ここでは「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由についてご説明します。

「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由・デメリット#1:
一般的な派遣よりも求人数が少なく、競争率が高いため

「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由・デメリットの1点目として挙げられるのが、一般的な派遣よりも求人数が少なく、競争率が高いためという点です。

厚生労働省が2021年に公開した、「令和3年度 労働者派遣事業報告書」によれば、全国における紹介予定派遣を実施している労働派遣事業所数は2,223所となっており全体の約6.8%に留まっています。

労働派遣事業所全体の6.8%しか実施していないということで、通常の派遣と比較すると圧倒的に求人数自体が少なくなってしまうという特徴があります。

また、結果として紹介予定派遣の競争倍率は非常に高くなっています。

同様に厚生労働省が2021年に公開した「令和3年度 労働者派遣事業報告書」によれば、「紹介予定派遣に申し込んだ人数（紹介予定派遣に係る労働者派遣契約の派遣先からの申込人数）」は141,340人に対して、「実際に派遣された労働者数（紹介予定派遣により労働者派遣された労働者数）」は22,251人です。倍率は6.35倍と非常に高くなっており、競争率が高いことが分かります。

紹介予定派遣に係る労働者派遣契約の派遣先からの申込人数	141,340人
紹介予定派遣により労働者派遣された労働者数	22,251人
倍率	6.35倍

従って、紹介予定派遣で働きたくてもそもそも働けない場合が多くあるという点は認識しておくべき点です。

「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由・デメリット#2:
選考や面接が厳しく、「派遣先がすぐに決まる」わけではないため

選考や面接が厳しく、「派遣先がすぐに決まる」わけではないという点も「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由・デメリットとして挙げられます。

「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由#1でご説明した通り、紹介予定派遣は倍率が6.35倍にもなる非常に競争率の高い派遣です。人気な派遣形態であることに加えて、企業が直接雇用を実施することを前提としているため選考内容が非常にシビアとなっています。

通常の派遣では派遣先企業と面談・選考などは実施しませんが、紹介予定派遣では派遣先企業による面談・選考が実施されます。従って選考を受けるにあたってはしっかりと対策をしないと落選してしまう可能性が高まります。

選考に合格するのが難しいため、派遣先企業がなかなか決まらないという状態も珍しくありません。紹介予定派遣で働くことを重視しすぎた結果なかなか勤務先を見つけられず、金銭的や精神的に余裕がなくなってしまうというのもよくあるケースです。

「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由・デメリット#3:
「正社員になれなかった」というケースが多いため

「正社員になれなかった」というケースが多いという点も、「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由・デメリットとして挙げられます。

紹介予定派遣は正社員になることを前提とした派遣形態です。しかしながら、無事紹介予定派遣として派遣されたとしても、必ずしも派遣先企業で正社員雇用されるわけではありません。

厚生労働省が2021年に公開した「令和3年度 労働者派遣事業報告書」によれば、「紹介予定派遣により労働者派遣された労働者数」は22,251人に対して、「紹介予定派遣で職業紹介を経て直接雇用に結びついた労働者数」は12,630人です。直接雇用に至るのは紹介予定派遣全体の56.8%に留まります。

紹介予定派遣により労働者派遣された労働者数	22,251人
紹介予定派遣で職業紹介を経て直接雇用に結びついた労働者数	12,630人
直接雇用の割合	56.8%

せっかく紹介予定派遣として派遣されても、必ずしも直接雇用に結びつくわけではないという点で「紹介予定派遣はやめとけ」と言われることがあります。また、正社員になれなかった場合、紹介予定派遣として働いた期間を無駄な期間だったと感じてしまうこともある模様です。

「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由・デメリット#4:
派遣期間中は常に評価が気になるため

紹介予定派遣は、「派遣期間中は常に評価が気になるため」やめた方がいいと言われることがあります。紹介予定派遣は、直接雇用に結びつくという観点から常に審査されているような感覚に陥ります。人事などだけでなく、同僚として働く人からも審査されているような感覚となります。

こうした緊張感がストレスとなるため、紹介予定派遣はやめた方がいいと言われることがあります。

「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由・デメリット#5:
有給休暇を取得するまでに時間がかかるなど待遇が悪い場合があるため

待遇が悪い場合があるというのも、「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由の1つです。例えば有給休暇を例に挙げると、一般的な正社員であれば雇用が6ヶ月を超えるとき、就業条件に応じて3～10日の有給休暇を取得することができます。

しかしながら紹介予定派遣の場合、派遣先との直接雇用に切り替わるタイミングで有給休暇取得までの起算日がリセットされてしまいます。結果的に有給休暇が正社員よりも少なくなってしまうというデメリットがあります。

他にも、仮に紹介予定派遣を途中で解約されてしまった場合、社会保険に加入できないということもあり得ます。社会保険は雇用期間が2か月以上となることなどが要件としてありますが、2か月以内に途中解雇されてしまった場合、社会保険に加入できない可能性があります。こうした待遇の悪さが、「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われることにつながります。

紹介予定派遣のメリットを解説

ここまで「紹介予定派遣はやめた方がいい」と言われる理由についてご説明してきましたが、紹介予定派遣にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

紹介予定派遣のメリット#1:
未経験や異業種などでも直接雇用される可能性がある

紹介予定派遣のメリットとして、未経験や異業種などでも直接雇用される可能性があるという点が挙げられます。紹介予定派遣は最長6か月の契約期間（試用期間）が設けられているという制度上、未経験歓迎の仕事が多くなっています。

また、派遣会社が候補者のアピールを手伝ってくれるため、スキルなどが不足していたとしても選考で有利になるようにサポートしてくれるというメリットがあります。

未経験であっても、契約期間の6か月で経験を積むことができ、仮に正社員として採用されなかった場合でも、同様の職種であればその経験をもとにまた応募できるという点が、紹介予定派遣におけるメリットの1つです。

紹介予定派遣のメリット#2:
職場の雰囲気を知ることができ、ミスマッチを防ぐことができる

職場の雰囲気を知ることができ、ミスマッチを防ぐことができるという点も紹介予定派遣におけるメリットの1つです。紹介予定派遣における契約期間は会社だけによる審査期間だと思われがちですが、実際は労働者による審査期間でもあります。

紹介予定派遣として働くことによって、契約期間中に職場の人間関係や雰囲気、業務内容が自分に合っているかなどを前もって知ることができます。通常の転職だと一度入社してしまった場合に辞めづらい傾向にありますが、紹介予定派遣の場合は直接雇用としての契約を行わないと決断すれば労働者側から直接雇用を拒否することができるという点がメリットです。

紹介予定派遣のメリット#3:
通常の選考で不利になる点を自身の実力で補うことができる

通常の選考で不利になる点を自身の実力で補うことができるという点も紹介予定派遣におけるメリットの1つです。紹介予定派遣では実際に職場で働くこと自体が選考となるため、履歴書などでの表面的な情報に加えて自分の実力をアピールすることができます。

もちろん、そもそも紹介予定派遣として働くために書類選考などを突破する必要はあるものの、正社員として入社するよりは選考のハードルが低いため、転職では選考を突破できないような状況であっても紹介予定派遣として採用される可能性は高まります。

従って、自分の実力に自信はあるものの職務経歴やスキルの観点から転職は難しいと考えている方にとっては、通常の選考で不利になる点を自身の実力で補うことができるという点は紹介予定派遣のメリットとなっています。

紹介予定派遣が向いている人の特徴を紹介

紹介予定派遣のデメリットや、紹介予定派遣のメリットなどについて説明してきましたが、どのような人が紹介予定派遣に向いていると言えるでしょうか。特徴についてご説明します。

紹介予定派遣が向いている人の特徴#1:
正社員になりたいと考えている人

正社員になりたいと考えている人にとって、紹介予定派遣はおすすめとなっています。通常の派遣は直接雇用を前提としているため、派遣期間が終了した後は次の派遣という様な労働形態となる傾向にありますが、紹介予定派遣は評価などがよければそのまま正社員として働ける可能性が高い形態です。

紹介予定派遣が向いている人の特徴#2:
働く会社のことを事前に知りたい人

働く会社のことを事前に知りたい人も紹介予定派遣はおすすめです。紹介予定派遣は、正社員として働く前に3か月程度の試用期間があるような状態で、会社の雰囲気や人間関係、仕事内容を事前に理解してから入社することができます。会社のことをある程度理解して入社したい人にとって、紹介予定派遣はおすすめです。

紹介予定派遣が向いている人の特徴#3:
未経験の職種に就きたいと思っている人

未経験の職種に就きたいと思っている人も紹介予定派遣はおすすめです。通常の転職だと未経験の職種はハードルが高い場合も少なくありませんが、紹介予定派遣は門戸が広く未経験歓迎の求人も多いことが特徴となっています。従って、未経験の職種で働きたいと考えている人は紹介予定派遣としてまず働くことがおすすめです。

紹介予定派遣が向いていない人の特徴を紹介

紹介予定派遣に向いている人の特徴について説明してきましたが、逆にどのような人が紹介予定派遣に向いていないと言えるでしょうか。特徴についてご説明します。

紹介予定派遣が向いていない人の特徴#1:
正社員として働きたいと思っていない人

正社員として働きたいと思っていない人は、紹介予定派遣には向いていません。紹介予定派遣は直接雇用を前提としている派遣形態であり、その分採用倍率や選考難易度が高くなっています。

派遣社員として「様々な職場で働きたい」「ワークライフバランスを重視したい」などの理由で正社員になりたいと考えていない場合は、紹介予定派遣で働くことは向いていないと言えるでしょう。

紹介予定派遣が向いていない人の特徴#2:
今すぐ仕事をしたい人

今すぐ仕事をしたい人も紹介予定派遣に向いていない場合があります。紹介予定派遣は書類選考や面接が必要となります。また、求人数が少なく競争率も高いため、選考に時間がかかるうえに必ずしもそこで働けるか分からないという特徴があります。

時間がかかってしまうと金銭的な理由やそれに伴って精神的な余裕もなくなってしまう場合があるため、紹介予定派遣として働ける人は選考や働き始めるまでに時間がかかることをある程度許容できる人ということとなります。働き始めるにあたって時間がかかると厳しい場合、紹介予定派遣は向いていないと言えます。